経営レポート
『 がん防災 ~「がん」からはじめる治療と仕事の両立支援~ 』
今回は、「がん防災」という言葉を取り上げてみます。
「がん防災」とは、どういう意味かというと、私たちは、台風や地震などの自然災害については、対策を学校で教わったり、避難袋や防災訓練で備えていますよね。一方、がんは2人に1人がなる病気なのに、そういう準備はしていないと思います。
確かに怖い病気ではありますが、企業経営に何か関係があるのでしょうか。
実は、がんの有病者の三分の一が現役世代です。働きながら、がん治療をしている方は、今後ますます増えると予想されます。がん告知に直面して、仕事どころではないと、びっくり退職してしまう方もいらっしゃるかもしれません。普段からの備えがないと、貴重な人材を突然失ってしまうリスクがあります。
企業経営者の中には、知り合いの経営者のお話の中で、ベテラン職員が突然退職してしまい、納期が厳しくなって苦労したという話を聞いたことがあるかもしれません。
いざという時に慌てないですむよう、そして貴重な人材を活用できるよう、あらかじめ準備をしてほしい、それが企業の「がん防災」です。
社員が突然がんになる現実
がんは「高齢の方がなるもの」というイメージに対し、実際には、がん患者(有病者)の約3人に1人は現役世代です。40代以上の死因の1位はがんです。
また、自分だけががんにならない、自社の社員だけはがんにならない、というのは誤解から来る思い込みです。
遺伝によるがんは全体の5~10%といわれます。がん発生は偶然の要素が大きいのです。
生活習慣の改善のでがんのリスクを下げることは可能です。しかし、タバコを吸わなくてもがんになることもあります。
早期のがんには自覚症状がありません。自覚症状が出たときには進行してしまっている場合があります。
備え不足から貴重な人材を失うリスク
がんになってから2割の方が退職をするといわれます。しかもその約半分が、治療開始前の「びっくり退職」です。
これは経営者や当事者も「がん=死」との誤解から起きるもので正しい知識をアップデートすれば、人材を失わずに済みます。
がんの生存率は急速に伸びており、医療の進歩で就労継続は可能になってきています。
医療の進歩と共に通院で受けられる治療が多様化し、働きながら治療を続けられる方も多くなっています。
人を大切にする企業が選ばれる時代に
「大企業のように安定した採用ができない」「給与面でとても競争できない」「社員が高齢化している」「離職率が高い」と人材確保に悩まれている経営者が増えています。
一方で中小企業の社員は、会社の倒産の次に自身の病気・ケガと就労について不安に思っています。
支援体制を整えた企業では、社員の安心度が増え、定着率の向上などの効果を実感しています。
適切ながん対策は、がんになった社員を救うだけでなく、人材確保に直結する重要な方策となりえます。
適切ながん対策で、健全な経営を。
企業のがん対策は、がん以外の私傷病(脳疾患、心疾患、糖尿病など)をもつ社員への対応も可能にし、さまざまな効果を見込めます。
国や行政もがんおよび両立支援に対する施策を導入しています。積極的に活用し、御社の経営基盤を強化しましょう。